内平外成、地平天成

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「1998年」と一緒に、「平成10年」と、年号が併記してある。   「出典はたしか、「史記」と「書経」だったか……」  腕を組んで、「実は、オレもうろ覚えだけど」と、亞輝斗は頬をかいた。 「「内平らかに外成る、地平らかに天成る」。つまり、国の内外、天地とも、平和が達成されるって意味を込めた祝であり呪(・・・・・)」  (イワイ)(ノロイ)。  彼曰く、祝と呪は、表裏一体。そして。 「「言霊」は、一番簡単な「まじない」の基本だ」  人々が託し、「言葉」に込めた「諸々」の「願い」。  「最初はさ、「珍しい白い動物が献上された! めでたい!」だの、「綺麗な雲が出たからきっとイイコトが起こる! やったぜ!」みたいな記念日のノリで、「天皇の崩御と即位」以外のきっかけで、結構頻繁にコロコロ変えてたんだぜ」  でも……と、声を潜め、亞輝斗は不気味に笑いながら言葉を紡ぐ。  彼の白く、鋭い牙が、口の端からチラリと見えた。
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