とある雪の夜の事

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 クロは何も言わず、ゆっくりシロに近付き、髪を、頬を撫で、  シロの唇に、そっと、自らの唇を重ねました。 「…ありがと、クロ。  私のお願い、聞いてくれて」  シロは嬉しそうに目を閉じて、  そうして、クロと呼ばれた悪魔は、  ある病院で、不治の病と診断された少女が息を引き取りました。  とても満足げで、嬉しそうな微笑みを残して。  まるで、最期に幸せな事があったかの様に。  安らかに、息を引き取りました。  しんしんと、何もかもを白く染めるように雪の降る、とある夜の事。
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