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とある雪の夜の事
雪が、降っていました。
しんしん、しんしんと。
何もかもを、白く染める様に。
雪は音を喰い、世界を静寂で支配します。
気温も低く、真暗という事もあって、
その病室には、どこか物悲しい空気が漂っていました。
「…昔々。
ある所に、一匹の悪魔がいました」
その物悲しい空気を切り裂く様に、青年は口を開きます。
真暗に溶けてしまいそうな程黒いフードを着た、青白い顔をした青年でした。
「…なぁに?おとぎ話?」
青年の言葉に答える様に、尋ねる声があります。
桃色の病人着を着た、可愛らしい少女でした。
「うん。まぁ久しぶりにね。
…それじゃあシロ、続けても良い?」
「わぁい、やったぁ。
久々のクロのおとぎ話だぁ」
軽い口調の青年…クロに対し、シロと呼ばれた少女は嬉しそうに答えます。
「そう言ってもらえて嬉しいよ。
えぇと…じゃあ…そうだなぁ…。
…昔々。
世界が始まるより、宇宙が始まるより、ずっとずっと昔。
そんな世界に、ある悪魔がいました。
その悪魔は…そうだね、カラスとしよう。
カラスはね、死神のような仕事をしていたんだ」
「あー…あの陰気臭くて、どこかじめっとした奴みたいな?」
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