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そしてカラスはその人の魂を喰いに行って…でも、出来なかった。
…何故ならカラスは、その人に恋をしてしまったから」
「…なんだか古臭いお話ね」
「わぁ…辛辣なツッコミだなぁ…」
クロがむくれると、シロは「ごめんごめん」と謝ります。
けれど、それでも、シロとクロから笑顔が消える事はありませんでした。
「カラスは悪魔の、『けして人と関わってはいけない』という絶対の掟を破り、それから何度も何度もその人に会いに行った。
その人は不治の病に侵されていて部屋から出る事は出来なかったから、カラスは外の世界の珍しい花や綺麗な石、自分が見聞きした、時には自分が作った沢山のお話を持って行った。
…その人は悪魔のカラスを、笑って迎え入れてくれたんだ」
そこで僅かに息をついたクロは、すっと窓の外を見ました。
シロはクロが向いた方を見ます。
…けれど、外では雪がしんしんと降っているだけでした。
「…何も、無いよ?」
「ううん、なんでもない」
クロに視線を戻したシロが尋ねると、クロは微笑みながらそう告げて、おとぎ話を続けます。
「…やがて月日が過ぎ、カラスは一つの決意をした。
『なんでもいい。
何をしてでも…例え悪魔の禁を全て破ってでも、その人を治してやる』、ってね。
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