1人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「…悪魔って、良く分かんない」
「僕もそう思うよ」
二人はまたクスクスと笑いました。
…けれどクロの笑顔は、どこか寂しそうで。
「カラスは恐怖した。
…愛した人を救えない事にではなく、自らが死んでしまう事に」
「…どうして?」
シロの問に、クロは長い沈黙の後、言ってはいけない事をどうにか話すように、重たく口を開きました。
「…カラスは一度…本当に一度だけ、見てしまっていたんだ。
その人が刻一刻と近付いてくる死に対して怯え、苦しみ、悲しむ所を。
…それを見てしまったから、カラスは死を恐れてしまった。
…カラスは奴に、はいと言ってしまったんだよ」
クロはそこでおとぎ話はおしまい、と言うかのように、深くため息を尽きました。
「…そっか」
シロはぱたりと、窓の外に目を向けます。
どこからか届く色とりどりの灯が、降り続く雪を鮮やかに照らしていました。
さっきまで二人の声が響いていた病室に、重い沈黙が流れます。
「…シロ」
「ねぇ、クロ」
沈黙を裂いたクロの言葉を遮るように、シロが声を上げました。
それは、いつもクロが聞いていたシロの声でした。
「…どうしたの?シロ」
「…クロは、私の事、好き?」
シロの声に、からかいの色はありませんでした。
最初のコメントを投稿しよう!