とある雪の夜の事

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「…悪魔って、良く分かんない」 「僕もそう思うよ」  二人はまたクスクスと笑いました。  …けれどクロの笑顔は、どこか寂しそうで。 「カラスは恐怖した。  …愛した人を救えない事にではなく、自らが死んでしまう事に」 「…どうして?」  シロの問に、クロは長い沈黙の後、言ってはいけない事をどうにか話すように、重たく口を開きました。 「…カラスは一度…本当に一度だけ、見てしまっていたんだ。  その人が刻一刻と近付いてくる死に対して怯え、苦しみ、悲しむ所を。  …それを見てしまったから、カラスは死を恐れてしまった。  …カラスは奴に、はいと言ってしまったんだよ」  クロはそこでおとぎ話はおしまい、と言うかのように、深くため息を尽きました。 「…そっか」  シロはぱたりと、窓の外に目を向けます。  どこからか届く色とりどりの灯が、降り続く雪を鮮やかに照らしていました。  さっきまで二人の声が響いていた病室に、重い沈黙が流れます。 「…シロ」 「ねぇ、クロ」  沈黙を裂いたクロの言葉を遮るように、シロが声を上げました。  それは、いつもクロが聞いていたシロの声でした。 「…どうしたの?シロ」 「…クロは、私の事、好き?」  シロの声に、からかいの色はありませんでした。     
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