とある雪の夜の事

6/8

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「…うん。好きだよ」  クロは答えます。  クロの気持ちを。  クロの、本当の想いを。 「本当に好きだ。大好きだ。愛している。  …何もかもを捧げても良いと思える程に」 「…ありがと、クロ」 「…ごめんなさい。ごめんなさい。  僕は、僕は…!」 「言わなくても大丈夫だよ、クロ」  シロの声に、クロはシロを見ました。  シロは、微笑んでしました。  幾筋も涙を流しながら。  それでもシロは、微笑んでいました。 「でも…っ!」 「こんな体になったのはクロの所為じゃないし、どうせ明日には死んでいるかも分からない体だし」 「っそんな事!」 「私の体の事は私が一番良く知ってるんだよ?  もう私は長くない…ううん、本当ならもう死んでる筈だったんだと思う。  …きっとクロに出会えたから、今まで生きる事が出来たんだね」 「それは違う…違うよ!  シロが本当に頑張ったからっ!だから今まで生きて来れたんだっ!  僕は所詮悪魔…人間の命を奪うだけの、最悪の存在なんだっ!」  俯きそう声を荒げるクロの手に、シロは手を伸ばし、そっと触れました。  あまりにも細い…触れれば折れてしまいそうな程細い腕と指。  …けれどそこには、確かに体温が、温もりがありました。     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加