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もうすぐ、平成が終わるという。
そんな話を聞いたのは、もう結構前になる。
書類の変更なんかでバタつくな。
その時思ったことは、それくらいだった。
税が変わる、年号が変わる。
その度に、ある一日を境に、書類が一斉に差し替えられる。
それは、単純な作業なようでいて、意外にめんどうくさいのだ。
そのことを、今から少しばかり憂鬱に思った。
そんなことを考えたことも忘れた頃になって、天皇の退位の日程が決まり、どうやら平成が終わるのも、現実味を帯びてきた。
自分の親よりも高齢な天皇の過密なスケジュールを知れば、そろそろ皇太子に仕事を明け渡しても、誰も文句を言わないだろう、というのは素人考えらしく、生前退位というのも、なかなかにめんどうくさいものらしかった。
確かに、書類の差し替えなんかより、はるかに込み入った手続きがあるのだろう。
それでも、数々の問題をクリアにして、平成はとうとう終わりを迎えることになった。
今年の新入社員は、平成生まれがやってくる。
ちょっとした珍獣の扱いで、部署に配属された最近の若者といった感じの、物怖じはしないが、どこか人と距離をとる新入社員を迎えたのも、もう十年近く前になる。
彼もすでに、中堅どころの社員に育ち、次々やってくる平成生まれの後輩を、ビシビシ指導している。
平成生まれ、というが、もうすぐ平成が終わるなら、本当に平成という時代に育てられたのは、僕らの世代じゃないかと思う。
彼らのほとんどは、生まれは平成だが、その人生の大部分を生きるのは、これから来る新しい元号の時代になる。
一方僕らは、社会に関わり始めたその頃に、平成が始まったのだから。
平成と呼ばれる期間に、僕は成人し、就職し、2回転職し、4回引越しをした。
はじめてのセックスを経験し、4人の女性と付き合い、その内の一人とは、3回別れて、3回よりを戻した。
その彼女とは、僕の認識の中では、現在進行形で付き合っていることになっている。
結婚の経験はない。
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