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もし本当にそうだとすると、僕は、いらんお節介をしてしまったのかもしれない。
せっかくプレゼントのブレスレットを買ったのに、渡す相手は、すでにプレゼントの中身を知ってしまっているのだ。
たぶん、僕がいる手前、ブレスレットを買わない訳にはいかなかったのだろう。
だから、ブレスレットを工藤くんに渡して良いものかと悩んでいたのかもしれない。
「なに?どないしたん?」
事態に気づいた僕の顔が暗くなっていたのだろう、静ちゃんが僕を心配して顔を覗きこんできた。
「いや、あの……ごめんなさい」
「なんで謝ってんの?」
「あ……なんとなく……」
僕は気づいた事を言おうかとも思ったのだが、静ちゃんは僕に気づかれたくないから黙っているのだろうし、なにより、僕を覗きこむ静ちゃんの顔を見てると言い出す事が出来なかった。
帰ったら藍ちゃんに相談してみようと思いながら三条大橋を渡りだした時、静ちゃんが何かに気づいて橋の上から下の鴨川を覗きこんだ。
「あれ見て!鴨川にアホが入ってんで!」
すぐに僕も、静ちゃんの隣から下の鴨川を覗いてみる。
「ほんとだ。鴨川ん中、走ってる」
僕達が見たものは、三条京阪側に向かって鴨川の中を渡ろうとしている3人の男の姿だった。
鴨川の中に入ると言う行為は大変危険で、付近には川の中に入るなと書かれた看板が立っている。
例外として、鮎釣りが解禁された短い期間だけ川の中に入る事が許される場合もあるが、基本的には川の中に入る事は禁止。
だが時々、酒でも飲んで調子に乗った若者達が、橋を渡らずに鴨川の流れを突っ切って三条京阪側に渡ったりしている。
他にも鴨川の真ん中まで行って、見ている人達や連れの女の子達に、凄いだろうアピールしている事もある。
本当はそんな事をしている奴らには注意をする事が正しいのだろうが、残念ながら、みんなは「あいつらアホな事しとるわ」くらいで、誰も注意しないのが現状だった。
僕は川の中に入って大丈夫なのかと思いながら見ていたが、僕の横で見ている静ちゃんは楽しそうだ。
「あはは、こけよった! ……あれ?」
「どうしました?」
「今こけよった前の奴、後ろの奴らから逃げてんのちゃう?」
「えっ?」
「ほら、後ろの2人……バットみたいなん持ってない?」
「バット?」
僕は目を凝らして、鴨川の中に入っている3人をよく見てみる。
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