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確かに、バットのような物を持った後ろの2人の男が、前の男を追いかけているように見える。
僕達と同じように他の人達も気づいたようで、ちょっとした騒ぎになってきた。
「ヤバいんじゃね?」
「ありゃ、死んだな」
「お前、こっから飛び込んで助けてやれよ」
「俺、関係ねーし」
「あの人達、すごーい」
「誰か助けてやれよな……」
「これ、ヤバいよ……明日、新聞載んじゃない?」
僕の周りから、いろんな声が聞こえてくる。
勝手な事を言ってと思うが、僕も同類なのだ。
周りの人達と一緒で、助けに行かずに橋の上から見ている事しか出来ない。
3人が鴨川の中を突っ切っている付近は、そんなに深くないらしく、膝下くらいまでしか水がきていない。
なので、少しは水に足をとられるだろうが、僕はこのまま頑張って逃げ切ってくれと思っていた。
しかし、逃げている人が川の真ん中付近に来た時、また転倒してしまう。
すると、後ろから追いかけて来ていた2人の内の1人が追いついて、転倒した男をバット?で殴りつけだした。
もう1人の男は、周りの僕達みたいな野次馬に向かってアピールするように、手に持っているバット?を天にかかげて、振り回しながら何かを叫んでいる。
転倒し、バット?で殴られ続けている男は起き上がってくる気配がない。
川の水は、彼らの膝下まであるのだ。
もし顔が水につかっていたとしたらヤバい。
もちろん、周りの人達もそんな事は気づいているようで、さらに騒ぎは大きくなっていった。
ピピピピピー!!
「退いて下さい!!」
ピピピピピー!!
「警察です!通して下さい!!」
誰かが通報してくれたのだろう。
警官が数名、笛を吹きながら野次馬達をかきわけて、橋の下の三条河原に降りて行く。
その間も転倒した男には、容赦なくバット?が振り下ろされていた。
さすがに、僕の周りで見ていた女の子達から悲鳴があがる。
警官達が三条河原に着いて鴨川に近づいた頃、バット?を持った男達は転倒した男を残して反対側の三条京阪に向かって逃げ始めた。
だが、警察もバカじゃない。
すでに橋を渡って三条京阪に警官2人が向かっている。
しかし、橋の先には何台もの車が行き交う大きな道路があり、三条京阪に行くには、その道路にある横断歩道を渡らなければならない。
案の定、警官達は赤信号に捕まっているようだった。
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