62人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうしよっ、あいつら逃げよんでっ」
静ちゃんも僕と同じで、何も出来ない事が歯がゆいんだろう。
しかし、あの2人は逃げ切る可能性が高い。
もう川の中からあがって逃げ出しているし、やっと信号が青になって道路を渡りだした警官達が追いつく事は難しそうだ。
一方で、三条河原から鴨川に着いた警官達は、警官の1人の体にロープを巻きつていた。
そして、そのロープを巻きつけた警官が、川の中で倒れている男を助けに鴨川の中に入って行く。
おさらく、体に巻きつけたロープは命綱だろう。
ロープの反対側は、三条河原にいる警官達の手にしっかりと握られていた。
僕は、こんな膝下くらいの浅い川でも命綱をつける警官に驚いていた。
正直、始めは そんなんつけてんと早く助けに行けよと思っていたが、相手は何が起こるかわからない自然なのだ。
川の中に入って行った警官が、川の中で倒れていた男を抱えて三条河原に戻ってくると、周りで見守っていた人達から拍手喝采が沸き上がった。
警官達の様子を見ていると、助け出された男の命は大丈夫なようだ。
「良かったですね」
「うん。後はあいつら捕まえるだけやね」
僕はまた三条京阪に目を向ける。
三条京阪では警官1人が立ち止まって無線で何やら話しており、もう1人の警官の姿が無かった、
やはり、男達を取り逃したのだろう。
きっと、姿の見えないもう1人の警官は、男達を探しに動いているに違いない。
「あ~、逃げちゃったみたいですね」
静ちゃんも三条京阪に視線を向ける。
「ほんまや。でも、こんな人多い三条でバット持ってんやし、すぐ捕まるよ」
確かに、こんなに人だらけの場所でバットを持って歩いていたら、かなり目立つ。
そんな危ない奴らが歩いていたら、すぐに通報されて捕まるだろう。
そして、とりあえずは騒ぎも治まって周りの人達も動き出したので、僕達も地下鉄に乗る為に三条京阪へと向かった。
切符を買い、山科方面の地下鉄を待つ僕達の耳に、隣にいたカップルの会話が聞こえてくる。
男「やっぱ、さっきの奴らも、あいつらの仲間なんじゃねえの?」
女「うちもそう思ったわ。バット持ってたしね」
男「しっかし、驚いたよな~。関係無い鴨川に座ってた俺達まで巻き込まれる所やったからな」
女「助けてくれたんは良いけど、その後の警察の話で予定狂ったもんね」
最初のコメントを投稿しよう!