62人が本棚に入れています
本棚に追加
「雅人くん、准一くんにも言ったんですが、集会の詳しい事はまた連絡しますんで、良かったら連絡先を教えてもらえませんか?」
「あれ?前に家電(家の電話)、教えたよね?」
やはり、雅人くんは忘れているようだ。
「えっと……前にもらった番号は、間違ってたみたいで繋がらなかったので……」
「そうやった?ごめんごめん。なんか書くもんある?」
「無いです」
「う~ん……ひとしは、携帯持ってないん?」
「持ってません。って、雅人くんは持ってるんですか?」
「持ってるよ。でも使い方、よ~わからんから、家に置いてある」
( それでは携帯の意味が無いような気が…… )
そんな会話をしていると、単車の音が聞こえてきた。
「おっ、もう来よった」
「まだ 10分もたってませんよね?早くないですか?」
「いや、あの音は准一や」
雅人くんには、単車の音で准一くんだとわかるらしい。
少しして、本当に単車に乗った准一くんがやって来た。
「鮎川、これ」
特攻服に着替えて戻ってきた准一くんは、僕に紙切れを1枚渡してくる。
「俺の携帯番号や。集会の件、詳しくわかったら俺に連絡してくれ。雅人には、なかなか連絡つかんやろうからな」
さすが准一くん、よくわかっていらっしゃる。
「了解です。じゃあ、また連絡しますんで、よろしくお願いします」
雅人くんが満足そうな顔をして、僕と准一くんの会話に入ってくる。
「准一は気が利くね~、段取り早くて助かるよ」
「お前がしっかりしてへんから、俺が段取りしなあかんのやろが」
僕には雅人くんの事で、いつも准一くんが苦労している姿が目に浮かんだ。
「それじゃあ僕は、これで失礼します」
僕は、2人がこれから出かけるようなので、今日はもう帰る事にした。
「いろいろ悪いけど、よろしく頼むな」
「また連絡待ってるね~」
僕は2人に返事を返して、団地を後にする。
少しして、団地の方から2台の単車が走り去る音が聞こえた。
「ただいまです」
「おかえり~ デートどうやったん?」
僕が藍ちゃん家に帰ると、すでに藍ちゃんは仕事から帰って来ており、里美ちゃんと裕美ちゃんが遊びに来ていた。
僕が玄関を開けるなり、里美ちゃんと裕美ちゃんが飛び出してきて、ニタニタしながら今日の事を聞いてくる。
「どうやったんって、別に何もないですよ」
最初のコメントを投稿しよう!