出会い

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ドキドキ。 輝に見つからないように、人の間を縫って歩く。 「愛海…!」 見つからないように歩いたはずなのに、当然のように彼は私を見つけた。 「…」 俯いているせいか、輝の表情が読み取れない。 昨日のこと、怒ってるかな? 怒ってるよね…… 感じ悪く帰っちゃったもん。 「昨日は…」 「ごめんなさい」 輝が何か言う前に遮るように、私は言葉を発した。 「え?」 「昨日は感じ悪く帰っちゃったから…ごめんね」 俯いていた顔をさらに下げて謝った。 「はぁー」 謝ると、輝から深いため息がこぼれる。 すると、ズキズキと胸が痛みだした。 やっぱり怒ってるんだ。 気がつくと、涙がポロポロとこぼれてきた。 「ちょっ…なんで泣くの?」 私の涙に気づき、オロオロする輝。 そんな輝に、何も言葉を返せないままただ涙を止めようとしていた。 「場所変えよう。ここじゃ目立つ」 朝の駅は人通りが多い。 知らずと注目されていた。 もし自分だったら、嫌でも見ちゃう。 喧嘩? 別れ話? 他人事でも想像しちゃう。 輝は遠慮がちに手を引いて、その場を後にした。
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