61人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
輝に手を引かれて来たのは、小さなカフェだった。
席に着くと、カフェオレとブラックコーヒーを注文する。
どちらとも、話を切り出さない。
店内に響く、洋楽の音がリズムよく耳に入ってくる。
「泣き止んだ?」
先に沈黙を破ったのは輝だった。
反射的に顔を上げると、輝は笑っていた。
その笑顔に少し安心する。
「…うん」
「そっか」
会話が続かない。
注文したカフェオレとコーヒーを店員さんが運んできてくれた。
ガムシロップを入れたカフェオレは甘くて、でも少しほろ苦かった。
ストローで氷をかき混ぜていると、輝が言った。
「愛海は俺のこと嫌い?」
突然の輝の言葉に、小さく首を振り否定する。
そうじゃない。そうじゃないんだよ…?
むしろ好きだよ。でも、私はあなたと両想いになる資格はないの…。
「じゃあ、何で泣くの?」
理由を言ったら、きっとあなたも私を嫌いになる。
もう、好きだとか、付き合ってなんて言ってもらえない。
最初のコメントを投稿しよう!