事故物件

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 俺は高校を卒業して就職した。就職をした会社の動機は何かと聞かれたら、正直に言ったら近くに安い賃貸物件があったからだ。  俺は一人暮らしがしたかった。行動を制限される狭苦しい家が大嫌いだった。そんなことが理由で会社を選んだのかと思われるかもしれないが、俺にとっては重要なことなんだ。  高校生の時にバイトをして少しは貯金をしていた。就職と同時に家をでようとせっせと貯めた金だ。しかし、家具一式を買ったら無くなってしまう程度の金額だ。だから、賃貸料金は安価なのが第一条件だった。  高校生の間に見つけた安価物件。外見はそんなに見窄らしいわけではないのだが、なぜだか他の物件よりも半分も安く借りられる部屋だった。  これは取り押さえなくてはと急いで不動産に向かった。そこでどうしてこんなにも安価なのか説明を受けた。  前の住居人が首吊り自殺をした部屋だからだと言うことだった。でも、俺はそんなことよりも値段の方にしか興味がなく、すぐに契約してしまった。  自殺者が出たからって幽霊が出るわけなんてないだろう?  そんな感覚だった。  引っ越してからの一ヶ月なにも起こらなかった。それ見たことかと得意げに笑った。そんなことで生活に影響が出るわけないってな。  でも、それは一ヶ月間だけだった。今思い返せば照明の点滅が始まりだったと思う。最初はそんな小さなことからだった。買ったばかりなのにもう切れたのかと少し疑問に思いつつも蛍光灯を交換した。けれども照明は時々点滅する。蛍光灯じゃなくて元のプラグの接触が悪いんじゃないかとそこで諦めて結局放置してしまった。頻繁になるわけではなかったので生活に支障はきたさなかったからだ。
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