事故物件

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 次に起こった現象はポルターガイストだ。かと言って物が浮き上がったりするようなものではなく食事の準備をしていたら箸やフォークが落ちる程度である。食事の用意の最中に不意に机から落下するのだ。俺は台所にいて、食事をする場所は居間なので衝撃が加わるはずもないので起こり得ない現象だ。これは流石に気味が悪くなった。  その次は気配である。風呂で洗髪していると背後に気配を感じるようになった。気になって振り向くも誰もいない。当たり前だ、住居人は俺だけなんだから。しかし、じっと粘りつくような視線を背中に感じ続けてしまう。とても居心地が悪くなって風呂はシャワーだけで済ますようになってしまった。  流石に事故物件の幽霊説を疑い始めた。  気になり始めるともうダメだ。日常の些細な出来事の全てが怪奇現象に思える  ガスの元栓が開いている。帰宅すると玄関の鍵が開いている。朝、目覚めると照明が点いている。そんなことが次々と起こり、どんどんストレスが蓄積されていった。  そして、これは幽霊だと確信したことが起こった。夜中にふと目を覚ました。時間はわからないがカーテンから差し込んでくる光が一切ないことからまだ深夜なのだと判断した。まだまだ寝れると判断して、俺は寝返りを右にうって体勢を変えた。  そこで身の毛がよだった。壁際に人影が見えるのだ。立ちながら頭を項垂れているようにも見えるが、暗い部屋のなかでよく見えなかった。  心臓が早鐘をうつ。瞼を強く閉じて、速く朝になれと念じた。暫くすると声が聞こえた。  ナイ…  力なく呟く声が俺の耳に焼き付いて反響する。  速く朝になれ速く朝になれ速く朝になれ。俺は念仏のように朝を渇望した。  気配は消えることなく残ったままだ。こちらを見ている気がした。  気がついたら朝だった。  雀が囀る声が聞こえてくる。カーテンの隙間から差す射光が俺の布団を照らしている。穏やかな朝だった。  回転の鈍い頭を昨夜人影が見えた壁に向けた。そこには何の変哲もない木目調の壁があるだけだ。  昨夜の出来事に流石に耐えられなくなった俺は高校生の時の親友、和樹に相談し始めたのだ。
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