事故物件

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 「んで、どんな相談なんや?」  「家で怪奇現象が起こって怖くてどうしたらいいのかわからないって感じですね」  「なんやあいつ。失礼な奴やな」  おっさんが顰め面で愚痴る。  「そもそもな、先住人であるわしに挨拶もせんのやぞあいつ。電気を点けたり消したりして催促しても無視やねん」  あ、早速一つ解決したな。  「ひどいかもしれませんね。では、物を机から落としたりと言うのは」  「あぁ、あれか。あれはな、あいつ一人で飯食うねん。わしが机の前に座ってるのにやぞ? ホンマに有り得んと言うか、供え物くらいだせっちゅうねん」  はい、二つ目解決。それにしてもこのおっさん、自分が死んだ自覚はあるのに図々しいと言うかふてぶてしいというか。  「もしかしてお風呂とか一緒に入ったりしました?」  「おぉ、したで。背中流してやろかな思てな。でも、あいつ酷いねん。わしの目の前でシャンプーするんや。禿げてるわしへの当て付けかいな!」  三つ目解決だ。それにしても器の小さいおっさんだ。あいつは気づいてないんだから仕方ない気がするんだが。心の中でツッコんでしまう。だが、少しおっさんの反応が楽しくなってきた。  「ガス栓や鍵が開いてたり、朝に電気が点い てるって言うのは」  「あいつ、かなりズボラなんやな。それもわしのせいかと思っとるんか」  「違うんですか?」  「ちゃうわ。あれは単にあいつが閉め忘れたり消し忘れたりしとるだけや。こっちは電気代や空き巣が入って来ないか、気が気でないで」  ちゃんと注意しておこう。だらし無い性格なのは知っていたが自分で自分の首を絞めていたとは。  「それと、極めつけがこれなんですが、寝てる時に人影が見えて怖くなったって。しかもなんか呟いてて恐怖を増進させるって」  もう予想はつくのだが一応確認してみる。  「あいつな、自分の布団しか用意せんねん。わしはどこに寝ろっちゅうねん。そりゃボヤくやろ。布団がナイってよ」    「概ね、原因はわかりました。俺がここに一ヶ月も住む理由はなくなりましたので、これで失礼します」  「なんや、話のわかりそうなやつが来たと思ったんにもう帰ってまうんか。残念やのう」  俺はおっさんに一礼して家を出た。
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