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今日は君が、
今日は特別な日だ。
君が、この世に生まれた日。
君は、私の親友。
最近では、真友、心友、神友なんて表現もするらしい。
君は私にとって、そのどれでもあるし、そのどれでもないとも言える。
大事な友達で心の拠り所で、神様のように尊い。なんて言ったら、大袈裟だと笑うだろうか。
だけど本当は、言葉でなんか表せない。君は私にとって、唯一無二の大切な存在。
君はきっと知らない。
私がどれだけ君に救われているか。
幸せそうに彼氏の話をする君を見て、私もとても幸せな気持ちになること。
君が笑っていてくれることが、私の幸せだってこと。
私が今日のために、いつもどれだけ頭を悩ませるか。
プレゼントは何にしよう?バースデーカードに、今年は何て書こう?
何ヵ月も前から考えて、悩んで。
喜んでくれるだろうか。気に入ってくれるだろうか。似合うだろうか。
不安と期待を込めて選ぶ。
それから君の大好きなプリンを買って、君に会いに行く。
「ユカ、誕生日おめでとう」
プリンの入った箱を掲げて声をかける。
だけど君は答えてはくれない。
さらさらの長い髪も、頬に浮かぶえくぼも見せてくれない。
私の前には、冷たく硬い石があるだけ。
そう、今日は特別な日だ。
君が、この世からいなくなった日 。
「今年は駅前に新しくできたお店のプリンだよ。見て、器もすごい可愛いの」
模様の入った小さな陶器のカップ。プリンの上にはクリームとベリーが飾られている。
ことん、とユカの前にひとつを置き、もうひとつにスプーンを入れる。
「ん、おいしい!」
思わず頬に手を当てる。おいしいものを食べたときの、ユカの癖だった。それが可愛くてつい真似をしては、「真似しないでよ!」と怒られた。
今はもう、何も言ってはくれないけど。
そう思ったら、頬に当てた手に、つっと雫が伝って落ちた。
ねえ、ユカ。
私は本当に、君のことが大好きだった。
幸せになってほしいと心から思ってた。
ずっと笑っていてほしかった。
君のいない世界は、とてもさびしい。
でも、月並みだけど、私、ユカの分まで生きるよ。ユカの分まで幸せになって、笑って生きるよ。
いつか、いつになるかわからないけど、いつかまたユカに会えたとき、胸を張って会えるように。
君は今でも、いつまでも、私のたった一人の親友だから。
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