1 巡り合わせ

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その人は見たところ20代前半。 背はかなりの高身長。 すらりとした手足に深緑の着物がよく似合っている。 髪は男にしては少し長い。 白い肌。 形のいい唇。 そして、目。 その人はイケメンに疎い私でもわかるくらいかっこよかった。 いや、イケメンというより、優雅な美形だろうか? 「お前は、彼氏が欲しいのか?」 イケメンが口を開いた。 うわぁ、いい声!凛としていて… 違う!そこじゃない! 先程の願い事を聞かれていたのだ。 私は顔から火が出そうなくらい恥ずかしくなった。 「なってやろうか?」 強い風が吹いた。 木々がさわさわと揺れる。 私のセーラーの襟が逆立つ。 スカートは波打った。 数秒後、 「は?」 私は自分の耳を疑った。 なにを言ってるんだろう。この人は。 頭がおかしいのか? それとも私はからかわれてる? 「俺は神だ。 お前の願いを叶えてやろうか?と言っているんだ。」 そう言って私を見つめてくる。 立って目線を合わせると、その真剣な瞳に私は少しドキドキした。 ん? …神? やっぱりきっと頭がおかしいのだ。 逃げよう。 「間に合ってるんで、結構です。」 私は一目散に走って逃げた。
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