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1.
「うー、寒い」
マフラーを巻きコートの襟をたてた姿でマンションの扉を入ったとき、既に身体は冷えきっていた。
季節は二月半ば、日によっては通勤電車の座席ヒーターも疎ましくなるというのに今日は真冬に後退している。
そういえば、今朝。出勤前に見たテレビの天気予報で寒の戻りがあると言っていたと思い出す。
妻が気を利かせてくれて、とりあえずとマフラーを鞄に突っ込んでくれたことをありがたく思った。
時計を見ると既に日付が変わっていた。いわゆる午前様である。
仕事で帰りが遅くなることが多い僕は、週末くらい早く帰って家でゆっくりとしたいと思っていたのに、帰り間際の取引先からの電話に出たのが運のつき。
自社の問題ではなかったのは幸いだが、無関係でもないトラブルの収拾にかなりの時間を費やし終電での帰宅となった。
家の中はしんと静まり返っている。
帰りが遅くなることは妻へメールで伝えていたので、まだ幼い二人の子供と一緒に既に眠っているのだろう。
できるだけ静かに、冷えた身体を温めるために風呂に入りほっと息をつく。
風呂でほっこり温まり、入浴前に付けたエアコンでリビングは丁度心地の良い具合になっている。
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