潜入捜査官 小暮翔人

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翔人に潜入捜査が命じられるのは、企業の脱税を調べる場合が多い。同じ情報室所属でも周りのエリートと違って荒れていた雰囲気を隠そうともしない翔人には、場末の店の地味な案件が割り当てられることが多かった。風俗店や娯楽施設、安っぽくて汚れた飲食店……。そんな過去の先入先と、いま手にしているパンフレットは、まったく別世界のように見えた。 翔人の不審を理解したのか、太田室長は片眉を上げてニヤリと笑みを作ってみせた。 「この施設には病院も併設されていてな。ここに入ったまま死ぬ連中も多い。身寄りのない年寄りが死んだら、奴らの遺産はどこへ行くと思う?」 「そりゃあ国の金庫に、だろ?」 室長が目配せする。翔人はピン、と理解した。 「この施設の奴らが、身寄りのない老人の遺産を、ちょろまかしてるってこと?」 「そんな情報があった。お前はそこに潜入して、詳しい手がかりを掴んできてくれ」
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