潜入捜査官 小暮翔人

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「はじめまして! 今日からこちらで働く、小暮翔人と言います。よろしくお願いします!」 狭い事務室で五人の同僚を前に、明るくハキハキと自己紹介する。そんな自分に反吐が出そうになりながら、翔人は無理やり笑顔を作った。隣に立つバーコード頭の施設長が続ける。 「小暮くんは沼淵さんと一緒に、初期利用者さんの対応をしてもらいます」 施設長の手招きに応じてやって来た女性を、翔人はサッと眺め回す。パサついた髪を無造作に一つにまとめ、薄汚れた服には細かい毛玉が浮いている。顔色も冴えず、全身から疲れがにじみ出ていた。 「沼淵です。よろしく」 彼女は軽く会釈をすると、逃げるように事務所の隅のキャビネットの陰に隠れた。笑顔のまま、翔人はココロの中で舌打ちした。いけすかねえな、こんなところ、早く尻尾をつかんで出ていこう。
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