潜入捜査官 小暮翔人

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「ああ、利用者さんのお世話はハナちゃんが全てやるので、職員は少しで足りるんです」 「ハナちゃん?」 「うちの施設全体を管理するAIです。照明や空調から、利用者さんの健康状態の把握、食事の用意、入浴やトイレのお世話、それに暇つぶしの相手まで、全てハナちゃんが対応します」 そんなことパンフレットには書いていなかったな、と翔人は思った。『安らぎの森』なんて名前で、自然豊かな環境を売りにしているけど、結局は無機質な機械任せか。少し皮肉な気分になり、沼淵に尋ねた。 「へぇ、すごいですね。でもお年寄りって、AI対応よりも人間味あるほうがお好きなんじゃないですか?」 「そうでしょうね。でもAIのほうが私よりも、よっぽど人間味あふれていますから」 沼淵は薄い唇で自嘲気味に笑った。 「私達人間の仕事は、入居してすぐの利用者さんにハナちゃんの使い方を説明することと、入居希望の人にハナちゃんが説明する時に同席するだけです」
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