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「あの、お名前お伺いしても宜しいですか……?」
「牧村菫よ!もうすぐ一条菫になるけどね!」
笑顔で自信満々に言われた。
この人、本当に婚約者なんだろうか。
「あの、本当に暁君の婚約者さんなんですか?」
「えぇ!暁とは結婚の契りを交わしたわ!」
また笑顔で自信満々に言われた。
「暁君との出会いはいつですか?」
「あれは、桜の美しい八年前の入学式だったわ……。桜以上に美しい暁を見た瞬間、運命を感じたの……」
両手を絡み合わせて当時を思い耽っているのか、彼女は懐かしそうに微笑みながら言った。
成る程、八年前ということは東大の入学式ね。
そこで暁君に一目惚れしたと。
「これ、証拠があるわ」
え?証拠?
そう言って彼女が取り出し私に見せたのはボイスレコーダー。
ポチっとボタンを押すと……
『暁君ってぇ、好きなタイプの女の子ってどういう子ぉ?』
そこから聴こえてきたのは彼女のブリブリっとした声。
どんな証拠なんだろうと考える前に、次に聴こえてきた暁君の声に私は固まる。
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