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「桜子ちゃん、おめでとー!」
「東京でも元気に暮らしてね、桜子ちゃん!」
「桜子さん、お手紙ちょうだいね!」
みんな、口々に桜子に別れの言葉を言い、中にはぐすんぐすんと泣いている子もいた。
「みんな、ありがとうな! わたし、東京に行っても、がんばる!」
いつだって元気いっぱいな桜子は、別れをおしみつつもはげましてくれる学校の友人たちに、咲きほこる春の花々のような明るい笑顔を向けて、白い歯を見せた。
「でも、さびしいなぁ~。桜子ちゃんが東京の女学校に進学するなんて……。本当やったら、あと一年はまだわたしたちといっしょに小学校に通えたのに……」
桜子と仲が良かった同級生の蘭という少女が涙ぐみながらつぶやく。すると、そばにいた担任の男の先生が、蘭の頭をなでてなぐさめた。
「友達のめでたい門出を笑顔で送り出してあげなさい。優秀な成績が認められた朧月夜さんは、一年早く小学校を卒業して東京の名門女学校に入学することになったのだからね」
「けれど……」
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