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※※※
こっそり着替え、抜け出した家の外は、びっくりするくらい寒かった。
でも、もう家には戻れない。
何度も往復してたら、誰か起きてしまいそうだから。
懐中電灯を取り出して、明かりをつける。
(……白い。雪、もう、やんでいるけれど)
予報通り、街は白く包まれていた。
だけど、薄く積もっただけの雪は、明日になれば溶けてしまいそうにも見える。
(行こう。だって、決めていたから)
――独りでも、俺は、あの景色を見る。
想いこんだ俺は、足から伝わる柔らかさを踏みしめ、街の外れへと向かう。
音のない暗闇の街を、独り、冷たさを感じながら。
(……なにしてるんだろうな、俺)
神社への石段を登り、たまにずるっと滑る怖さを感じる頃から、そんなことを考えるようになった。
……確かに、こんな暗くて怖い場所、彼女を連れてこられるわけがない。
(引き返そう、か)
そうは想いながら、でも、石段を登る足は止まらなかった。
――なんのために、俺は、こんなことをしてるんだろう。
――キレイだったよって、彼女に見せびらかしたいからか。
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