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スッキリしない気分のまま、俺は、石段をようやく登り終えた。
「……着いた」
懐中電灯に照らされた、神社の広場。
雪の白さが一面に満ちて、いつもより神様がいそうな、不思議な感じがした。
朝になったらきれいだろうな、と、そう想っていたら。
「やっぱり大変だな、この階段」
「!?」
ふりむけば、そこにいたのは俊一。
「俊一、なんでここに」
「そりゃ、一人でなにかあったらどうするんだよって」
そう言いながら、俺の隣に並ぶ俊一。
「まぁ、お前らしいけどな」
しっかり防寒着を着込んだ姿は、暖かそうで、油断がない。
「……明美に、話した?」
浮かんだ不安に、俊一は首をふる。
「余計な心配、かけられないだろ」
……その配慮が、ありがたくも、素直になれない。
「俊二。これ、パパとママから怒られるぞ」
「わかってる。でも、決めてたから」
ほら、と、崖の方向を指さす。
少しずつ白み始めた、朝焼けの空。
まだ暗さが残って、全部は見えないけれど。
「違う景色が、見れるから」
去年の景色とは違う、高低差のついた白さが、とても新鮮だった。
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