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「さて。そろそろ、帰るか?」
しばらくシャッターを切り、景色もしっかり味わった頃。
カメラを下ろした俺を見て、俊一は静かにそう言った。
うなずいて、二人で道を帰る途中。
「……この景色を、さ。俊一は、明美に見せたいと想った?」
俺は自然に、そう問いかけていた。
「お前は?」
「……見せられるなら、一緒に、見たかったよ」
――できれば、三人で、隣り合って。
そう考える俺に、俊一は答える。
「見れば、いいものだったよ。でも、危険を冒すことはないな」
いつもの俊一らしい、くっきりとした応え。
「でも、俺はもっと良い景色を、見せたいと想ったんだ。見たことのない、景色を」
――それが、俊一と俺の、違い。
「だから、誘ったんだ。俺らしいかなって、想って」
「確かに、お前らしくはあるよな」
優しく、俺の言葉を聞いてくれる俊一。
……自分では、決してそうしないと、わかっているからこそ。
「でも、違うんだ。明美は、それをする俺じゃなくて、止める方がいいんだ」
「明美は、そんなこと言ってないと想うけどな」
――そう言いながら、鼻をかく俊一。
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