溶けない景色を一番にして

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(俺だから見れるけど、彼女が望まない景色)  ……そうか、と、カメラのレンズを覗く気持ちを想いだしながら、あることに気づいた。  同じ景色だけれど、それを見る人や感じ方は、人それぞれ。  『また去年みたいに、きれいな景色、見れるといいね♪』  ――彼女が望んだ景色は、三人で見る、去年の風景の続きだったんだ。 (でも俺は、違う景色を見せたかった。……見たかった)  苦い想いを感じながらも、出かける前のもやもやした気持ちは、どこか違うものへと変わり始めていた。 (やっぱり俺は、かっこよくないし、まっすぐでもないよ)  あの日の彼女に感じた想いが、まるで裏切りのように、変わってしまっていたから。  ――自分が見たかったのは、いつまでも溶けない、あの日々を切り取ることだったんだ。  バッグのカメラの重みを感じながら、自分の気持ちに気づいてしまう。  切り取った景色の美しさを、想い返しながら。
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