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――雪の景色が好きだと、彼女は言った。
「いい場所、知ってるよ」
そう答えたのは、俊一。
俺と同じ顔をした、双子の兄。
――雪も止み、まだ凍る前の、わずかな時間。
三人で、白く染まった橋と川を抜け、普段は行かない畑へ向かう。
着込んだ身体は動きづらいのに、慣れない雪の寒さは、それでもけっこう応える。
「うっ、わぁぁぁ……!」
声を高鳴らせる彼女に続いて、俺と俊一も、その景色を眼に入れる。
「……っ」
そして、言葉を失う。
見えたのは、一面の白の世界。
どこまでも、どこまでも。
地味な茶と緑の景色は、今、真っ白に塗り替えられていた。
世界が全部、そうなったんじゃないかって、想えるくらいに。
「よかった、想像通りで」
俊一が、ほっとしたようにそう言ったのは、どこか俺や彼女の感想と違っていた。
――わかってる。たぶん、言葉通り、想像してたんだろうから。
それができるから、彼女はこの寒さの中でも、三人で出かけようとしたんだろう。
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