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感心するように言った後、彼女は「でもね」と言い、苦笑する。
「鼻をかいてたね。あれ、ちょっと困ったなって時の、イチくんの癖なんだよね」
俊一が困った時、そうする癖を、俺も知っている。
ただ、双子でない俺以外で知っているのは、彼女くらいのものだろう。
「俊一のこと、よく見てるね」
「そりゃあ、幼なじみとして、かっこいい双子は嬉しいじゃない」
「……双子?」
「ニイくんもかっこいいよ? 好きなことにまっすぐだから」
笑いながらそう言う彼女に、たぶん、裏はない。
クラスでも、それは評判だ。
無邪気に笑い、よく叫び、想っていたら口にする。
好きなことも、ためらいなく好きと言えてしまう。
――だから、彼女の視線が誰に向かっているのかも、バレバレだ。
「俊一の方が、さすがだよ。俺とは違うから」
「あれっ、落ち込んでるの? なんで?」
不思議そうな彼女に、逆に問いかけたかった。
……自覚がないと、逆に、自分のことがわからないのかもしれない。
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