0人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
※※※
「……ニイくん、本気で言ってるの?」
困った顔の彼女に、俺はうなずく。
「――雪の日の夜に、山の上の、神社へ行こう」
冷たい風が吹く、下校中。
ずっと考えていたことを、二人に言った。
「でも、あの神社、明かりもなにもないよ」
「知ってる。だけど、だから、朝日がすごくキレイなんだ」
裏山にひっそりと建つ、長い石段の先にある神社。
もう、あまり人が行かないからか、建物はボロボロになりつつあるけれど。
(一度だけ、こっそり見に行ったことがある)
切り立った崖から覗く、森の深さと朝日の景色が、すごくキレイだった。
「雪の日なら、もっと、キレイだと想う」
だから、あそこからなら、越えられると想った。
――あの日に見た、別世界の白さを。
「……三人で、行こう」
二人で、とは、言えなかった。
(三人なら、せめて、いつもどおりにできるから)
それは、逃げだとも、わかっていたけれど。
――でも、そんな甘い考えは、一言で終わる。
「やめよう。私、あの場所に行くの、危険だと想う」
いつもの彼女らしくない、きっぱりとした、硬い声で。
最初のコメントを投稿しよう!