小さな花と猫の旅

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「うううう … 私は嫌だって言ったのに …… 」 「最後の方はお前だって楽しんでたじゃねえか」 「ガット殿 … 」  大理石の床に金箔で描かれた複雑な魔方陣の上、魔力を使い果たしてしおしおになったフィオレオがしくしくと泣いていた。魔法使い用の回復魔方陣によってみるみる内に魔力が戻ってくる。その横で、悪びれた風もなくあっけらかんと言ったガットに向けて、白髪の老人がハァと溜め息をついて、やや厳しめの声を上げた。 「魔法使いがこんなになるまで、回復魔法を使わせるのはどうかと思われますぞ。しかも、今回だけでなく、この町に来てから何度も何度も … 。フィオレオ殿の技術の拙さのせいもあるのでしょうが … 、それでも、せめて、回復薬を使うなどしてみてはどうかね?」 胸あたりまでたっぷりある白い髭がもごもごと動く。さすがにガットも「はあ … 分かりました」と一応生返事をしていた。  老人は、この町の魔法協会の長だ。二人がこの町に来て 1 週間、既に 3 回はフィオレオがガットの肩に担がれて協会に来ているのを見ている。しかし、それが、『勇者の回復に関係なくセックスをしていた為、魔法使いが魔力を使い果たしました』という事実だとは、さすがに考えも付いていないようだ。
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