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最寄駅を降りて、家へと向かう。もう23時を過ぎている。
明日も6時には起きて支度し、出社しなくちゃならない。今の会社にうつって3年、ずっとこんな調子だ。まだ20代だから病気こそまだないけれど、最近どうも風邪が治りにくくなっている気がしている。でもそれには気付かないふりをし、ただ仕事のことだけを考える。友人と付き合う暇もなく、恋人もいない。仕事に没頭するのがいいことなのか、もっとバランスを取るべきなのか、見当がつかないから、取り敢えず目の前のことをやるしかない。
マンションの玄関でカードキーを通し、解鍵する。エレベータを上がり、自室にもう一度カードキーを通すと、カチャ、と音がして部屋があく。
ああ、やってしまった。部屋の電気がついたままだ。今朝つけたまま出てしまったか。無駄になった電気代の分だけ、疲労が上乗せされる気がする。
「おかえり」
するはずのない声が聞こえて、腰が抜けるほど驚いて後退りした。ソファーに人が座っているではないか。ずれた眼鏡を直してその男を見つめる。
「今日も遅かったね。」
「……ど……ちらさまですか?」
「分かんないの?」
俺のスウェットを勝手に着ている男は……俺、か?俺なのか?
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