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空から降りてくる小さな雪が当たり前になってきた12月。どこにでもあるような花のアーケードの下で、僕はプロポーズをした。
「帰り花を見てみたいの」
人気のない歩道にかかった時、隣を歩く君が呟いた。
遠くまで続く外灯が二人並んだ影を映し出す。闇に落ちていく雪粒があたりをいたずらに白く染めて、まるで夢の中にでもいるような感覚だった。
でも、手から伝わる柔らかい体温は紛れもなく本物で、どうしても頬が緩んでいく。
「ねえ、聞いてるの?」
「……うん? 花が見たいんだっけ?」
「花、じゃなくて…。か、え、り、ば、な!」
グッと腕を引っ張られ視界が揺れる。慌てて意識を戻すと、君はまっすぐに僕を見ていた。
「かえりばな、……って何?」
「帰り花っていうのはね、春に咲く花が……例えば桜や梅なんかが、暖かい冬の日に咲いてしまう花のことを言うの」
「……ふーん。帰りながら花が見たいのかと思った」
「……」
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