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唇を噛み、呆れたような細い目で僕を睨む。
君が花を好きなことは知っている。けど今の僕は、まともに話を聞けるほど穏やかではない。
ほんとは、不安だったんだ。
僕のつたないプロポーズに「はい」と応えてくれたことに、今もまだ胸が高鳴って───
「──じゃあ、これを見て!」
ふっと温もりが離れて、君は跳ねるように走り出した。
うっすら積もる雪道に靴の跡が続いていく。……いつの間にこんなに積もったんだろう。
少し離れた外灯の下で足を止めて、両手を広げて僕に振り返り
「いくよ?」と、君は息を吸って……
一回、二回、三回……ひらりと回る
片足を軸にしてバレリーナのように回る度
君の髪が
黄色のロングスカートが
ひらりふわりと空を舞い、丸い円を描く。
あわせるように雪も跳ね上がり、揺れる影が雪の舞台に反射する。
落ちる雪が君を霞ませて
───綺麗だ。そう、思った。
「ほら、スカートがお花みたいでしょ? こんなに寒い雪の中で花が咲くの! 儚くて美しくて、そんな花がどこかに咲いてるの!」
伝わった? と付け足して
君は得意気に
さっきまで繋いでいた手を、再び僕に差し出した。
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