言わぬが花だがいずれ散る

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「……うわ」 外に出て、最初に出た言葉がそれだった。自転車で30分かけて塾に通っている俺にとって、残念な出来事が起きていたからだった。 「予報じゃ積もらないって言ってたのになぁ……」 雪が積もっていた。ざっと、3センチくらいだろうか。まだ雪も新しいらしく、踏み出した足はズボっと雪に沈んだ。歩いて帰る分には何とかなる積雪量だったが、そうする家に着くまで1時間以上はかかるだろう。視界も悪いし、タイヤが雪に取られる心配はあるが、自転車で帰ろうか―――そう思って駐輪場へ向かおうとした、その時だった。 「おーい、達也ー」 俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。ふと顔を上げると、塾の向かいにあるコンビニの駐車場に、見知った人が見えた。雪に気を付けて道路を渡り、近くに寄ると、その人は俺の肩をぽんぽんと叩いて微笑んだ。 「夜遅くまでお疲れ様。迎えに来たよ」 「……なっちゃん、免許持ってたんだ?」 顔にかかった雪を振り払いながら聞くと、なっちゃん―――夏美は、横に停めてある車をぽんぽんと優しく叩きながら言った。 「後期の間に取ったんだ~、言ってなかったっけ?」 「聞いてないよ。最後に会ったの夏じゃん」     
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