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「……○○大学が第一志望だったから、○○大学より上の大学の二次対策してないし」
「…………」
夏美は何も言わず、前を見つめている。
「……家から通えるから、自分の時間が取りやすいなって思って」
沈黙に耐え切れず、俺は他の理由を紡ぐ。
夏美は何も言わず、前を見つめている。
「……夏にオープンキャンパス行ったとき、雰囲気が良かったし」
まるで言い訳のように、俺は他の理由を紡ぐ。
「…………」
夏美は、何も言わず、ただただ前を見つめている。
「…………」
「…………」
「……へー」
沈黙を先に破ったのは、夏美だった。
「まあ達也がそう言うなら、それでいいや」
アクセルを緩めて俺の方を向いた夏美は、微笑みながらも、どこか寂しそうに見えた。
「ただちょっと、もったいないなって思っただけだからさ」
「…………」
夏美は前を向き直って、少し強くアクセルを踏み込んだ。知らないうちに雪は弱まっていて、視界は開けていた。
「ほら、もうすぐ着くよ。降りる準備しときなね」
「……うん」
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