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この瞬間を待っていたッ!
今日は特別な日だ。産声が響き、誰もが喜びと労いの声を上げる――俺が待ちに待った出産日である。
おめでとう! がんばったね!
温かい言葉に、とにかく泣いた。実際、俺も色々とがんばったワケだし、そのくらい許されるだろう。
「さぁ、抱いてあげてください」
お決まりの文言に、胸が高鳴る。この瞬間をどれだけ焦がれていたことか! ……ただ1つ残念なのは、彼女が〝妻〟でなく〝母〟になってしまったことだろうか。
ハッキリ見えはしないが、少しして先ほどとはまた別の感触に包み込まれた。温かくて、いい匂いがする。そして――柔らかい。
前の人生では触れることの叶わなかった彼女の肌、タワワな胸! 母になったとはいえ、当然しあわせの絶頂である。あまりの心地よさに、感極まって泣き声のキーも自然と上がってしまう。
『ああッ、今しばらくは俺だけのセンセイ! 俺だけのッ、オッパイ!!』
今の最高な記憶と 恋していた記憶は、気まぐれな女神によれば、あと数ヶ月もすれば消えてしまうらしい。だが、彼女を好きな気持ちだけは絶対に変わらないだろう。根拠はなくても、その自信だけはあった。
――今日は特別な日だ。俺が、初恋の人の子どもとして無事に転生を果たした、記念すべき日なのだ。
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