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ある冬の夜、俺は雪女と出会った。
それから俺の人生は一変した。
いや、一変と言えば大げさすぎる。
俺の人生はそこまでドラマチックでも豪華でもないし、そんな出来事が降りかかることもない、はずだった。
だが、あの日、あの雪の日、俺の人生は確かに変わった。
それだけは確かだ。
俺は今、どこにでもありそうな、ささやかな、けれどかけがえのない幸せを手にしている。
だだし、ある条件付きで。
これはそんな俺と雪女との冷たくて温かい、平凡な人生の物語だ。
俺の暮らすこの東北の田舎には昔から雪女の言い伝えがあった。
田舎といってもそこまで寂れた町でもなく、電車で少しの都会に行けば立派な大学や大きな病院もあるし、デートスポットには定番の巨大なショッピングモールだってある。
ただ毎年、大勢押し寄せる観光目的の登山者の中から遭難者が出るくらい、雄大で畏れ多い山の麓にある自然豊かな町なのだ。
そんな雪深い大自然に抗いながらも共存して生きてきた古い町だから昔からのいろんな言い伝えが今もまだ残っていて、雪女もその一つだった。
だが、雪女と言ってもこの田舎に伝わる話はみんなの知っているあの有名な、雪のように儚げな雪女とは少し違う。
俺が昔、いつかどこからか聞いた雪女の話はこんなものだった。
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