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私の動きがびくりと止まる。
とても静かなのに、何故かその声にはとてつもない威圧感があった。
「僕の所にサンタは来ないって言ったら、君は『どうして?』と聞いたよね。理由は簡単、悪い子の所にサンタは来ないんだよ」
「悪い子? 幸一の何処が?」
いつも朗らかで、誰にでも優しくて。
私は彼を天使のようだとさえ思っていた。
それなのに……
「雪が降っているんだね……雪の夜になると、僕の心は尋常ではない程に物悲しくなる」
「雪の夜に、何か悲しい事でもあったの?」
「あった……悲しくて苦しい、真っ白な雪が鮮やかな赤に染まっていく光景……その夜僕は、狂気に陥った」
私は言葉に詰まった。
一体何処でそんな光景を見たと言うのだろうか。
彼はそんな私から、その虚ろな瞳を冷たい窓の外へと泳がせた。
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