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「ねえ翼。僕には前世の記憶があるんだって言ったら、信じる?」
唐突な彼の言葉に、私は戸惑いを隠せなかった。
普通ならば、ただの冗談だろうと笑い飛ばす所だけれど--
「そ、そう言う人はたまにいるって聞くけど」
「信じてくれるんだね、ありがとう」
外にはしんしんと雪が降りしきる、とても静かな冷たい夜。
そんな静けさの中で聞いた幸一の声は、妙に淡々としていた。
「僕は前世で、幼くして一国の主だった。だから、国政も何もかもを周りの大臣達に任せてしまっていた。僕はただのお飾りである人形、傀儡政権てやつだよ。
国は困窮を極めていたと言うのに、そんな事は露ほども知らずに国民の血税の上に胡座をかいて暮らしていたんだ」
それはまるで異国のお伽話。
世界史の裏側を覗くような、残虐な物語だった。
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