幸せの翼

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「そんな国政に耐えかねて、とうとう民衆が反旗を翻した。その反乱は成功を収め、国府の人間は皆捕らえられ処刑された。  その行為は僕達一族だけに止まらず、僕の伴侶となる者の一族にまで及んでしまったんだ。しかも僕の目の前で、それらの残虐な行為は行われた。彼らの身体の一部分を欠損させていくと言う形で」  その話を聞いているだけで背筋にぞくぞくと悪寒が走った。  淡々と話す彼の目は虚ろで、何の感情も見えない。  こんな記憶を、彼は今まで一人で背負ってきたのかと思うと、どうしようもないやるせなさがこみ上げてくる。 「だから僕は神に願ったんだ。いつか必ず、奪い取られた彼らの時と身体を返してあげられるチャンスを下さいと」 「それが、今だって言うの……? その彼らって、ここで友達になったあの人達の事?」 「ただの偶然では済まされない。僕には分かるんだ、その11人全ての人間がここにいた」  彼はよく見えない目で私を見て微笑むと、その左手で私の胸を軽くトンと突いた。
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