幸せの翼

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 ***  イブの朝。  空には雪雲が垂れ下がっている。  もしかすると、今夜はホワイトクリスマスになるのかも知れない。  外に出る事は出来ないけれど、幸一と一緒にそんな雪の夜を過ごせたら……  幸一へのプレゼントはその時に渡そう。  彼はいらないと言ったけれど、それでも用意せずにはいられなかった。  私は少しウキウキとしながら、いつものように彼の病室へと顔を出した。 「幸一……」  そう呼びかけた途端、私は自分の目に飛び込んできた光景に愕然となった。  病室のベッドからはシーツが剥がされ、彼の荷物の全てが片付けられている。  入り口を見ると、彼のネームプレートも無くなっていた。 「ど、どういう事?」  私は慌てて、ナースステーションへと走った。 「すみません! 306の桜塚さん……は……っ」  しまった、と襟元を鷲掴みにして、私はその場に崩折れた。  胸が痛い、息が苦しい。  そう言えば、自分はそういった疾患を持つ病人だった。  最近の私は自分の身体の事をすっかりと忘れてしまっていた。
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