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イブの朝。
空には雪雲が垂れ下がっている。
もしかすると、今夜はホワイトクリスマスになるのかも知れない。
外に出る事は出来ないけれど、幸一と一緒にそんな雪の夜を過ごせたら……
幸一へのプレゼントはその時に渡そう。
彼はいらないと言ったけれど、それでも用意せずにはいられなかった。
私は少しウキウキとしながら、いつものように彼の病室へと顔を出した。
「幸一……」
そう呼びかけた途端、私は自分の目に飛び込んできた光景に愕然となった。
病室のベッドからはシーツが剥がされ、彼の荷物の全てが片付けられている。
入り口を見ると、彼のネームプレートも無くなっていた。
「ど、どういう事?」
私は慌てて、ナースステーションへと走った。
「すみません! 306の桜塚さん……は……っ」
しまった、と襟元を鷲掴みにして、私はその場に崩折れた。
胸が痛い、息が苦しい。
そう言えば、自分はそういった疾患を持つ病人だった。
最近の私は自分の身体の事をすっかりと忘れてしまっていた。
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