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「槙野さん、あなた走ったの? 駄目じゃない!」
「幸一がいないの……ねえ、幸一は、何処へ行ったの……?」
「桜塚さんはVIPルームに移っただけよ。さあ、早く病室へ戻りましょう」
VIPルーム……突然どうして?
そんな所、私なんかそうそう近寄れないに決まっている。
私は病室へと戻され、クリスマスイブのその日はベッドから出る事を禁じられた。
せっかくのイブなのに、幸一に会えない。
私の翼は何処へも飛ぶ事が出来ない。
会いたい
会いたい--
病気とは別の痛みが私の心臓を締め付ける。
ベッド脇に置かれた紙袋から、私はかさりと彼に渡す筈だったプレゼントを取り出した。
毎日こっそりと編み続けた真っ白いマフラー。幾つも目が飛んでガタガタのどうしようもない出来だけど。
外に出る事も出来ない。不器用な私にはそんな物しか用意する事が出来なかった。
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