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一週間が経った。
人魚による引き上げ作業も終わり、『ゆりかご』の前で私達は博士を出迎えようとスリープ装置を囲んでいた。
科学者の調整が終わると、箱は空気の漏れる音を出しながら、ゆっくり開いた。
千年のコールドスリープから目を覚ました『ゆりかご』プロトタイプの設計者である彼女は、出迎えた私達と『ゆりかご』を何度か見比べる。
きれいな金髪の女性だ。データ画像よりずっと美しい、と思った。
「人魚たちにちょっと似てるなあ」
「こら、失礼なことを言うんじゃない」
つぶやく私に隣の女性が小突いた。
スリープ装置から出て、戸惑っているような博士に、科学者が声をかけた。
「博士、おはようございます」
「あなた達は……これは?」
『ゆりかご』に向かって博士が指を指す。
「あなたが設計した物ですよ。もっとも改良は何度もされていますが。あなたのおかげで私達の暮らしは随分と安定して長いのです。これを見て下さい」
科学者が博士にデータが流れるパネルを見せる。
パネルに触れる白く長い指。
時間が立つにつれて、博士の顔色が段々変わっていく。
ただでさえ白い顔が、青色に、というよりは蒼白だ。
「こんな、こんなはずでは、なかった……」
「私のせいで世界が、人が、永遠に失われてしまった――」
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