ERROr

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イヴと二人で話す時間は沢山あるのに、気になっていた人魚の話の続きが、なぜだか聞けなかった。  イヴも話さなかった。思う所があるのだろうか。  ――それとも私との約束なんて忘れてしまったのか。  エラーを治療しないまま、私は一七五センチになり、明日で彼女と五年目を迎える。 「イヴ、明日は君がここに来た日だよ」 「そうね。五年目になるのかしら」  イヴは思いを馳せるように目を細める。  イヴが来てからの生活はとても刺激的で、楽しかった。  これからもそれが続けばいいと思う。 「お祝いをしよう、食べたい物とか欲しいものは何かある?」 「いつも通りでいいのに。アダムが優しいから今日まで生きて来ることが出来た、それだけでいいの」 「これからもずっと生きるだろう。何を言ってるんだい」 「そう、これからも、ずっと生きる……のね」  髪をかきあげながら、イヴが言う。  どうしてそんなに暗い表情をしているんだ。  彼女は時々、そうなる。それでも回数は初めに比べて大分減ったのだ。  死なない、と分かっていてもイヴの時代は死が当たり前だった。  やはり不安なのだろうか。 「ねえ、何か心配事があるなら……」 「大丈夫、ないわよ。明日はやっぱり豪華な食事がいいな」  頭を傾げながらイヴは子供のように笑う。もう私のほうが見下ろす形になっていた。 「分かったよ。君の好きなものを用意しておくね」 「ありがとう。ねえアダム」  パネルに指を滑らせはじめた私に向かってイヴが声を上げる。 「人魚姫はね、人間になりたかった、というのもあったけど、短い命でも死なない魂が欲しかったのよ」 「転生することができる魂が欲しかったの。永遠とは洗い流し、めぐること、と考えたのね」  私の指が止まる。あの時の話の続き。五年も前のことをなぜ。
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