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次の日の朝、彼女が赤い水たまりの中で静かに眠っているのを発見した。
机の上のメモには『ごめんなさいアダム』と書かれている。
「イヴ、どうして」
私の喉は、聞いたことのないような音をだしていた。
彼女とメモを何度か見返す。
体の中を何かが走るのを感じる。
ここ最近どんどん増えていた、あの感覚。
脳の中で生まれようとしている何か。
脳のデッドスペース。
私達がかつて捨てた機能、ああ、そうか――。
その瞬間、今までの生まれて再生し、記憶を挟み、再び生まれ、という工程が一気に頭の中に浮かぶ。
ウォーターシエル、海の世界、仲間の顔、イヴの顔。
私がぴったり三十三回ほど繰り返された後、映像は止まった。
胸をぎゅっと掴む。服がシワになるのも構わずに握る。
動悸が酷い。呼吸が荒くなる。
横たわるイヴを見ると、嗚咽が止まらなかった。
その時、私は、肉体ではなく、意識という生を受けた。
洪水のように押し寄せてくる、感情の波。
今まで感じていた単純で一定パターンの電気信号が吹っ飛んでいく。
私はあえぐ、のみこむ、おさえつける、うけつけない、うけいれる?
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