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最後に浮かんだのは、聖書を持って私を見つめる彼女の顔。
『私の罪は償えるのかしら』
記憶の中の彼女。イヴ、君は。
私は彼女の全てを分かった気になっていた。なんて馬鹿な奴なんだろう。
自分の幸せを優先して、イヴの苦痛から目を背けた。
涙の理由。時折うなされていた、夜。
私は彼女に寄り添った気でいて、満足してしまっていたなんて。
「ごめんよ」
頬を伝う涙をぬぐった。
「そんなつもりじゃあ、なかったんだ」
まだ言い訳をして、何度も何度も謝る。
彼女はもう許してくれない。
『ゆりかご』へ行けば再生が受けられるだろう。
でも、イヴはきっと。
「最初から永遠の命なんて望んでいなかったね」
二度と戻らない日々と彼女。
目を瞑ると、頬がひどく熱かった。
――悲しい、とはこういう感情か。
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