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着信は輝からだった。
「もしもし、愛海?」
「あ、うん」
電話の向こうの輝は、何かいいことがあったのか少し機嫌が良いように感じた。
明るい声の輝に、私は少し嬉しくなる。
「どうしたの?何かあった?」
しかし、次の輝の声で、私の気持ちは一気に沈むことになる。
「ごめん、今日遅くなる。夕食は食べて帰るから」
気持ちが底へ沈んでいく音がした。
「あ、そうなんだ。分かった」
落ち込んでる気持ちを悟られないように、私は必死に繕ってそう言った。
「じゃあ、そういうことだから」
輝がそういうと電話は切れてしまった。
スマホを持ったまま、私は作りかけのクリームソースに目を移す。
はぁ…。そして、ため息が一つこぼれた。
これ、どうしよう…。
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