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しかし、少し経っても何も起こらない。
第一、彼の重みを感じないのだ。
どうしたのだろうか。あまりにも私が拒否し続けてしまったから、急な展開に輝は驚いてしまったのだろうか。
つむっていた目を開けようとした瞬間、私は両手を引っ張られて起こされてしまった。
そして、悲しそうな表情をした輝と目が合う。
「そんな投げやりなの、俺は嫌だ…」
「えっ?だって、私が拒否しなきゃいいんでしょ?だから、いいよって…」
「確かに言ったよ?愛海に拒否されるのが怖いから触れられなかったって。でも、そんな投げやりにいいよって言われて『はいそうですか』って言えるわけないだろ?」
「何で…?」
「愛海の過去を知ってるからこそ、簡単にできないよ…。ずっと拒まれてて、なのに急に何で?って思うじゃん」
輝のその言葉で、私の気持ちは爆発してしまった。
「急じゃないよ…。ずっと悩んでたもん…」
「えっ?」
「ずっと、輝は触れさせない私に嫌気がさして、冷たくなっちゃったんでしょ?一回しちゃえば出会った頃みたいに優しくしてくれるんでしょ?だったら、しちゃおうよ」
私の言葉を聞くと、輝は驚いたように目を大きく開いたまま固まってしまった。
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